アルバム「東京」を発表したアキコ・グレースの Akiko Grace "Tokyo" Tourの東京公演が5月13日、六本木・スイートベイジル STB139で行われた。
会場には、評論家やジャズ番組の司会者またミュージシャンなど関係者もリスナーとして来場しており、アキコ・グレースの評判の高さを物語っていた。
ツアーは南の福岡を皮切りに北の盛岡まで北上する旅で、東京公演ではアルバムでもゲストで共演した中西俊博(Vl) 藤原道山(尺八)が参加した。


写真提供:青山音楽事務所

定刻の8:00PMに開演。アキコは白のシャツに黒のパンツとシンプルなコスチュームで颯爽と登場、"Giant Steps"でスタート。やや早めのテンポで同じリフを繰り返しながら緊張感を一気に高め聴衆を釘付けにする。2曲目の” Kagome Kagome ”までアドリブもアキコのピアノだけで埋め尽くし強烈な印象を与える。
2曲終わったところで、アキコのMCが入る。FMのパーソナリティーをやったこともあるせいかじゃべりは明快でそつがない。メンバー紹介で、藤原清登(B) 岩瀬立飛(Ds)の3人で”スーパー東京トリオ”と紹介していた。
3曲目は最もドラマチックな曲”東京狂詩曲”だ。緊張感と虚無感の混在を意識させるイントロでベースの藤原のアルコ奏法が実に効果的、アキコの作曲はみごとだ。4ビートのアップテンポの演奏でアキコのテクニックと構成美をもつインプロビゼーションが繰り広げられる。演奏は時折腰を浮かしての熱演で、全身のエモーションとエネルギーを鍵盤に注ぎ込んでいるかのようだ。そうした演奏でも髪を振り乱しての演奏かというとそうではなく、笑顔を交えたアイコンタクトをメンバーに送るなど、余裕のプレイだから恐れ入る。
この後、" In Front Of The Skywheel " 、矢野顕子の” 春咲小紅 ”で第1部は終了。

第2部は、まず、尺八の藤原道山が参加、”おぼろ月夜 ””クロサワ”を演奏した。日本情緒いっぱいのサウンドとなったが、アキコは”クロサワ”を作曲するに当たり尺八の音をイメージして曲作りを行ったとのこと。そして、黒澤明監督の映画を何回も見てイメージを考えたそうだ。ここでもベースのアルコ奏法が効果的に使用されていた。
アキコの作編曲は実にスケールが大きく、たった4人で演奏しているのにオーケストラを聴いているような豊かでダイナミックなサウンドに聞こえる。そのサウンドづくりに大きく貢献しているのがタッピーこと岩瀬立飛のドラムだ。
タッピーはアキコ・グレースのほかに木住野佳子や国府弘子など人気ピアニストから引っ張りだこで4ビートからラテン、ロックなどなんでもこなしてしまう。テクニックは抜群、インタープレとソロイストを盛り上げる感性も第1級だ。
また、パーカッションも得意で” 春咲小紅 ”では金属製の木魚のような楽器や、コンガ、笛など多彩な楽器を操っていた。本職のドラミングも強力でチャーリー・パーカーの"Dona Lee"をこの日も演奏。スネアを基調に迫力満点の演奏を聞かせてくれた。アキコの解説によると、通常の2倍くらいの急速調で演奏したとのことだが、すばらしいアレンジで最も”日本ジャズ”を感じさせる演奏であった。
2番目のゲストとしてバイオリンの中西俊博が参加、”悠久の 路””最初の光〜飛翔”を演奏。メローなサウンドで一息入れた感じとなった。
アンコールは”島唄 ”そしていつもコンサートで演奏する彼女の出世作" Delancey Street Blues "をトリオで演奏。アップテンポで始まり、アドリブの途中で半分のテンポに落とし再びアップテンポに戻すなど変化に富んだ内容で圧倒的な演奏を聞かせてくれた。
高水準のライブを聞いた満足感でいつまでも気持ちが高揚していた。
これからどのように変化していくのか本当に楽しみだ。(2004.5.15)