11月10日、赤坂・草月ホールで「鈴木良雄35周年記念MOON & BREEZEコンサート」が行われた。
チンさんこと鈴木良雄は、早稲田大学卒業、69〜73年の間渡辺貞夫グループ、菊地雅章グループで活躍。
73年渡米し、スタン・ゲッツ、アート・ブレーキー&ジャズ・メッセンジャーのレギュラーメンバーとして活躍、ビル・ハードマン&ジュニア・クックのグループに参加するなど数多くの一流ジャズメンとの共演を通じ世界的なジャズ・ベーシストとして認められた。
85年帰国後、自己のグループ“MATSURI”を結成し再び日本を舞台に活動を開始。93年新たなグループ“EAST BOUNCE”を結成し10年にわたる活動で日本の最長レギラー・グループの記録を作った。
そして、3年ほど前から現在のレギラー・グループ”Bass Talk”を主体に活動、東京はもちろん全国各地でライブを行い、リーダ・アルバムを18枚また数多くミュージシャンのアルバムへ参加するなど積極的な活動を行っている。
この35年という永きにわたり常に第一線で活動していることに改めて敬意を表したい。
昨年もSJ誌人気投票でベース分門の第1位に輝いたがそのことにも無頓着で、ただひたすら自分の音楽を創造し演奏することのみを考えている真摯な姿勢には多くのファンの共感を得ている。

そうした、チンさんに当日は熱心なファンはもちろん、レコード会社、放送局や評論家そして俳優の田中邦衛など多くの人が集った。
この特別なコンサートにチンさんはじめメンバーは床屋に行きジャケットも新調するなど気合が入っていた。
ステージはまず現在のグループBassTalk(鈴木良雄(B)野力奏一(Pf,Key,Snth)井上信平(Fl)岡部洋一(Perc)が登場、新譜「Moon And Breeze」からタイトルテューン"Moon And Breeze"でスタート。静かで美しいバラッドで早くもチンさんの叙情的な世界へ引き込まれる。チンさんのサウンドは一貫してジャズをベースにしたメロディックでアコースティクの良さを生かしたチンさんならではのサウンドだ。チンさんのCDはアメリカではスムーズ・ジャズのジャンルに入れられるときもあるがメカニックなエレクトリック・サウンドが多いスムーズ・ジャズとは一味違う温かいサウンドだ。
このサウンドづくりに井上のフルートは大きな役割を担っており、"Moon And Breeze"ではアルト・フルートが夜の静寂感をうまく表現していた。
1曲目を終わったところでチンさんが挨拶。いつもはライブハウスでの演奏が多いですがたまにはこのようなコンサート・ホールでやるのもいいですねとのこと。しかし、いつものなめらかなしゃべりとは少し様子が違い硬くなっているようだ。
2曲目"Pantanal"3曲目"Eastern Town"と演奏のほうはよどみなく進行、4曲目はチンさんの代表曲の1つになった"Koma(駒)"。これは、チンさんの生まれ故郷の木曽福島をモチーフにつくった曲。5月頃、忙しい仕事の合間を見つけて山ごもりをし曲づくりをしていたと聞いていたがその時に生まれたのではないか。井上がリーコーダーとフルートで奏でるシンプルで美しいテーマと野力のオブリガートそしてチンさんのメロディクなベース・ソロはたとえようもなくすばらしい。

2ndステージは、元EastBounceのサックスの藤陵雅裕とドラムのセシル・モンローが参加。"Mistral"でスタート。
藤陵のソプラノ・サックスの参加で厚みを増したサウンドが場内に響き渡る。
3曲目の"Wings"はCDでは渡辺貞夫が特別参加で吹いているが、この日は藤陵が担当、チンさんからビビらないようにと激励があった。
予定の最後の曲"Winter Daybreak"ではフルートの井上とパーカッションの岡部も入り合同演奏でドライブ、満場の拍手でいったん終了。
アンコールでチンさんが再び登場、こんどはピアノで1曲、そしてもう1曲はベースに戻り"My Dear Friends"を演奏した。この曲は親友でもあり マネージャーであった故・瓜坂正臣氏に捧げたバラッド。瓜坂氏がステージへ舞い降りたかのような錯覚をするほどしんみりと心を打つ演奏であった。

ゲストの参加もサプライズもない淡々としたステージであったが、チンさんの美しい音楽を目一杯聞かせた心温まるすばらしいコンサートであった。

これからもチンさんの一層の活躍を期待し、次回は40thコンサートを聴きたいものだ。(2004.11.13)