今日の出演は、原田依幸グループ。メンバーは原田依幸(Pf)時岡秀雄(Ts)望月英明(B)小山彰太(Ds)。ジャズファンでも余り知られていない面々。それもそのはず、このグループは本家フリージャズだ。
ジャズは今日ポップスや民俗音楽との融合が活発で多様化の一途を辿っているが、フリージャズはハーバップ同様ジャズのエッセンスを凝縮したスタイルだ。フリージャズは60年代から70年にかけて新宿を中心にアングラ文化の一つとして大きな盛り上がりを見せた。当時、前衛ジャズという言い方もされモダンジャズの次はフリージャズの時代ではないかと思ったくらいだ。

開演前に店主の明田川と話を交わしたが、明田川曰く「フリージャズは体力勝負だ。」とのことで全精力を使ったごまかしのない演奏なのだ。
ドラムの小山にフリージャズの聞き所は何ですかと質問してみた。小山は坂田明とともに山下洋輔トリオの第二期黄金時代を築いたフリージャズの闘士だ。彼の応えは「どういう展開になるのか演奏している方も判らないところが面白いのではないか」とのこと。ジャズの最も大きな特徴であるインプロバイズー即興演奏の極致がフリージャズだ。しかし、最近のフリージャズにはリフなどのアレンジを施しソロの部分のみフリーで行うという聞きやすいものもあるが、彼らの演奏は全くアレンジはない。コレクティブ・インプロビゼーションというスタイルで4人がお互い音を聞き分けながら演奏の火花をぶつけるというやりかただ。
ベースの望月にも同じ質問をしてみた。望月は、ドラムの森山威男やサックスの峰厚介らとのセッション経験が豊富で明田川が重鎮と呼ぶ名手だ。応えは、やはり小山と同じ答えで全く事前の打ち合わせはないそうだ。

2セット聞いた。1stセットが40分、2ndセットは30分くらいと短いものだった。
しかし、明田川の言った通りエネルギーが爆発するような演奏。ピアノの原田はノッテくると目を剥き舌を出し全身を使って鍵盤をハンマーのように叩く。ピアノがゆさゆさと揺れるのだからビックリする。テナーの時岡は自分の出番を窺い、ここぞとばかりに吼えまくる。ドラムの小山は2人を扇動するダイナミックなドラミングを展開するが、エキサイティングなプレイの割には冷静な顔をしているのが不思議だ。ベースの望月は、3人の暴れん坊を睨み付けるように独自のリズム・パターンを冷静に刻んでいる。
各人がばらばらに演奏しているのかというとそうではない。 お互いのフレーズやリズムを聞き分け瞬時に音を合わせていく。原田がリーダーということなので彼がシグナルを出して他のメンバーが追随するのかと注意深く聞いていたがそうでもなさそうで、ひと山越えると着地点を見出し、また誰かが入口をつくっていくという繰り返しで、メロディーに伴奏をつけるというやり方でなく、フレーズの断片を重ね合わせて行きながら空間を埋めていくというような展開だ。
サウンドは調性や一定のリズムというものを感じさせない不安定なもので、日頃ストレスを感じているサラリーマンには返って共感する部分があるのかもしれない。慣れてくるとクセになりそうだ。
最後にやっと原田のピアノから”黒いオルフェ”のメロディーが聞こえてきた。この曲をどのようにぶち壊して演奏するのかと思っていたら、これが終わりの合図だった。残念!!。(2005.3.12)