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東かおる「Footprins in New York 」リリースにあたって        (メール・インタビュー)
全てインスト曲を選びました。歌詞の無い曲には自分で歌詞を書き下ろしました。
東かおる
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− 「Footprins in New York / 東かおる」がJazz PageのCDレビューの8月アクセスランキングで第2位にはいりましたがいかがですか。

嬉しいですねぇ〜♪ アクセスして頂いた方々、有難うございます! 嬉しさと同時に、実は驚きもしました。 
アメリカに大学留学をしていた為、年に1度帰国ライブを続けていたものの、5年間は日本を留守にしていたし、今回のCDのコンセプト『インスト曲のみの、コンテンポラリー・ジャズヴォーカル・アルバム』という日本ではまだ珍しいジャンルにあえてチャレンジしたという事もあり、そんな中注目をして頂いているという実に半面、驚きを隠しきれませんでした。

− 上原ひろみのように最初にアメリカでレコーディングし発売するという形態ですが。その経緯を話してください。

簡単に言うと、それが自然の流れだったんですよ。
生まれも育ちも日本で、ほんの5年間をニューヨークで過ごした訳ですけど、その期間とにかく現地の空気に馴染もうと心掛けていました。
ジャズという文化が生まれた土地に根を張って生活してみようと。そうする内に、段々と自分自身の位置付けが明確になって来たんです。
「ニューヨークにいる留学生?日本人?ジャズシンガー?ジャパニーズ・ジャズシンガー?」 どれも正しい、でもどれもしっくり来ない。
ただ、Kaoru Azuma だけなんだと。
多人種・多文化なニューヨークで、それは確固たる位置付けを与えてくれましたね。この時点で私の価値観とか音楽観というものが、よりワールドワイドになりました。
また、アメリカで発信することにより、世界の人に耳にしてもらう機会が増えるのではないかとも思いました。
普段演奏している現地のアーティストと、生活しているアメリカ・ニューヨークでのサウンドを録音し、それを共有&共感してもらいたい、そう思う私にとって自然な流れから輸入版という形を取りました。

− ジャズの学校と言えばボストンのバークリーに皆さん行きますが、ニューヨーク市立大学City College校を選んだ理由はなんですか。

まず、友人がCity Collegeに通っていてクラスのカリキュラムを教えてくれていたんです。
バークリーやマンハッタンにあるニュースクールはパフォーマンスクラスが多く、世界中からスター教授や生徒も集まって、それはいい機会だと思ったのですが、パフォーマンスはその気になればいつでも出来るので、折角高いお金払って学生で行くのなら、もっとアカデミックな事をしたかったんです。
City Collegeはシンガーにでもしっかりと理論を叩き込ませる、それで惹かれました。
それと、もう一つの大きな理由は、学費が他の私学に比べると市立の大学ということで安かったこと!!これも勿論大きなポイントでした(笑)。
それから、私は日本では短大までの卒業資格だけだったので、ミュージシャンと言えども4年の一般大学の卒業学位が欲しかったという別の理由もありました。ほら、人生長い訳ですし(笑)。
と同時に現地の生徒と一般教養も学べる。音楽ばっかりじゃないので大変だけど、いずれそれを活かせる時が今後の人生にあるんじゃないか、と。
勿論たくさんジャズを学んだけど、それ以上に大学で学んだことの方が、大きいと思います。
City Collegeはマンハッタンにある一番大きなキャンパスなんですが、校舎前の芝生で色んな学部の生徒達とサッカーしたりとか(笑)、図書館で生徒同士、夜中まで勉強教えあったりとか楽しかったです。何か、青春でしたね〜。

− マーク・マーフィーやシーラ・ジョーダンに師事したそうですが、モダン・ボーカルを志向したのはなぜですか。エラやサラ・ヴォーンなどいわゆるスイング系のボーカルをどう思っていますか。尊敬するシンガー、ミュージシャンはだれですか。

これも、ただ単に自然の流れだったと思います。
モダン・ボーカルを目指すという訳じゃなくて、今の時代を生きる1人のシンガーとして、聴いたモノ感じたモノをナチュラルにジャズのフィールドで表現したいな、と。
そう思った時に、自分が聴いてみて共感出来るものが、マークだったり、シーラだったりする訳です。彼らは“今”をジャズと共に生きている。
そう、ジャズも生き物ですからね。
勿論エラやサラといったシンガーは素晴らしいと思うし、シンガーを志す者はしっかり聴くべきだと思いますけど、彼女等は既に数十年前のクラシック、かつ、色褪せることのないスタンダード。
だからこそ、その流れを汲み取りつつも、自分というフィルターを通して現代のエッセンスを加える。欧米では既に確立されたアイデンティティーだけど、まだ日本はそういう意味では遅れていると思います。
もっと自由になっていいんじゃないかと。少なくとも私はそういうスタンスで今後行こうと思っているんです。

尊敬するミュージシャンは、今回のCDのレコーディングメンバーを含め、国内外で普段よく共演させて頂いている方達です。
シンガーだと、恩師・シーラ・ジョーダン。彼女から歌を教わったというより、アーティスト&1人の女性としての生き様を得た感が大きかったですね。
あと、フランク・シナトラ。彼が歌うバラッドのフレーズ、ホーン奏者の様に滑らかで美しい。シナトラから学んだ事は多いですね。
それから、尊敬を通り越して、遺伝子レベルで感銘を受けるシンガーは(笑)、アイリーン・クラールです。あんな誠実な唄って、そうそう簡単に歌えるもんじゃないなー、と。

− バックのミュージシャンとのコンビネーションはすばらしいですね。アレンジやディレクションはほとんど東さんが行ったようですが、思い通りのサウンドが実現できましたか。このアルバムではどのようなことを伝えたいと思っていますか。

有難うございます!ミュージシャンとのコンビネーションをお褒め頂くのは、とても嬉しいです!
まず私は、『ディーバ的ジャズヴォーカル・アルバム』を作りたくなかったんです(笑)。あ、すいません、いきなり。。。
ただ『アンサンブルとしての音楽』を作りたかったんですよ。そこにヴォーカルが加わっている、みたいな。
アレンジを、フリューゲル奏者Scott Reeves氏のオリジナルを除いて全て自分でしたのも、自分の表現したい音楽観がよりダイレクトに伝わるんじゃないか、と思ってやりました。
そりゃ〜、めちゃくちゃ大変でしたし苦労もしましたけど(レコーディング途中でもメンバーに音の指示や譜面を書き替えたりもしていたので・・・苦笑)、結果、納得のいくサウンドがトータルで実現して良かったと思っています。

また、私が楽器の中で一番好きなものが、フリューゲルホーンなんです。
音色が好きなのと、私の声質に程よくブレンドするので。なので、録音する時はヴォイスとフリューゲル&トロンボーン(Scottはトロンボーン奏者でもあるので)でのハーモニーも沢山用いましたね。

ディクションに関しては、大学に入った時からしっかりとクラシック歌手の先生について、2年ほど徹底的にレッスンしてもらいました。そこで、大体の要となるポイントを得る事が出来たので、今回のレコーディングでは自分なりに練習を重ね挑みました。
NY生活での後半、向こうで歌っていて発音の事を注意されることは無くなり、自然に聴いてもらえるようになったものの、自分は特別100%ネイティブな発音を心掛けようとは思ってないです。
アメリカ生活を経て、最近思うんですけど、ヨーロッパ人シンガーなんて意外とアクセントがあってそれが逆にキュートだし、アメリカなんて合衆国な訳で、一言で何がパーフェクトだなんてないんですよね。
勿論基本はしっかりと練習しないといけないですけど、自分らしさが出ていれば、結果オーライだと思っています。

今回のアルバムに関しては、全てインスト曲を選びました。歌詞の無い曲には自分で歌詞を書き下ろしました。今までヴォーカルCDをよく聴かれていた方には珍しく、インストものCDをよく聴かれていた方には、歌詞が入る事によっての伝わり方の違いを楽しんで頂きたいなと思っています。
また、私が生活していたニューヨークでの空気、現地で活躍するミュージシャンの息吹やエネルギーというものを感じて頂ければな、と思います。

− ビリー・ストレイホーンの”A Flower Is A Lovesome Thing”のイントロとエンディングに喜納昌吉の”花〜すべての人の心に花を〜”を使用して見事な一体感を出していますが、日本の楽曲をジャズ化するということに興味を持っていますか。

“一体感”と感じて頂き、とっても嬉しいです。
まず、日本の楽曲をジャズ化すること。興味がない訳ではないです。CDに収録はしていませんが、ブラジルの曲に日本の曲をアレンジしてライブで歌ったりもしていますが、意識的に“取って付けた”のではないですね。
花とA Flower Is A Lovesome Thingに関しては、両方が“花”について語っている歌詞であること。ここからインスピレーションが沸きました。ただ植物の花を言っているのではなく、もっと深い人生の“花”、それぞれの人の“花”を伝えている、そこにポイントを当てました。ただその時に、ストレイホーンが作った掴み所のないA Flower〜 の始めの部分のハーモニーに、沖縄の音階を意識的にコードに当てはめたアレンジを大胆に付け加えたりはしてみました。
他の楽曲に関しては、日本の曲はやはり日本の曲。無理には両方の文化をこじつけ様とは思わないですね。そこに何らかの理由があれば、また話は別だと思いますけど。

− インスト曲に東さんが独自に日本語詩をつけた曲があります。どのような苦労がありましたか。

実は、歌詞を書くにあたって(セロニアス・モンクとベニー・ゴルソンの曲に日本語を付けましたが)、全く苦労は無かったんです。
むしろ、英語詞を付けた曲(ウェイン・ショーターとジョン・コルトレーン)なんか、半年は掛けたでしょうか・・・。
何か、何度もメロディーを歌っていると、自然と降りてきたというか。コードとメロディーの音からもインスピレーションを受けました。
ただ、日本語歌詞の場合、1音に1音節があるので、子音と母音をよりコネクトして流れて発する英語より、どうしても縦ノリになってしまう。そこで日本語でも流れるサウンドにする為の歌い方を苦労しました。

− あなたにとってジャズの位置づけはどのようなものですか。ジャズ・ボーカルとポップ・ボーカルとの違いは何ですか。 ジャズ・シンガーと呼ばれることに抵抗がありますか。

いえ全くありませんね。基本的に自分のフィールドはあくまでもジャズにあります。
ポップに聴かせつつも、根っこにはジャズのフィーリングがあるから、ライトでも安定感がある。それって理想なんですけど、そこで大切になってくるのが、その“根っこ”だと思ってます。
ジャズを学んだところで、歌ってみるとポップな人も沢山います。
ジャズって、やっぱり最終的に、自分をよく知るところから始まる気がします。ポップスも勿論そうでしょうけど、ジャズの場合は、例えば色々な人が長年演奏していている楽曲に自分のエッセンスを加え、料理するわけだけど、そこに“自分”が反映されないといけない音楽、だと思うので。
ファッション感覚でない、深さと、正直さ、の追求、というか。って固い言い方ですけど、
「自分にできるのは、これなんやーー!さぁ、聴いてくれぇ!」みたいなね(爆)。結局ジャズってそこだと思います。
なので意外とジャズは、普段の生活により密着したものだとも思いますね。

− いつもどのようなCDを聞いていますか。

最近は・・・、偏ってますねぇ〜〜(笑)。
自分のテイストがはっきりとしてきているので、そのアーティストの作品が殆どです。
ここ数年は、ハーモニーが美しく面白いアルバム、例えば、ジャズオーケストラでもコンテンポラリーなサウンド作りなものでMaria Schneiderの音楽だとか。
Pat Mathenyの音楽観も好きでよく聴きます。それから、シンガーのTierney Suttonのアルバムはミュージシャンとの一体感やアレンジも素晴らしく、そして彼女の歌声のクオリティーも好きなので、何度も繰り返して聴ける数少ないシンガーの1人ですね。
あ、あと、これは長年のお付き合い!!眠れない夜は、Keith Jarrett の“ Melody At Night With You” をよく聴きますね。あまりにも素晴らしいので、結局ベッドで最後まで通して聴いちゃったりするんですけどね(笑)。
「あれ、結局眠れてないっ!(焦)」と我に帰ることも度々。。。

− 今後どのような音楽を目指していますか。 また、日本での活動の計画を教えてください。

そうですね、より楽器的な要素も備えたヴォーカリストとしても活動していきたいと思っています。
大きな編成のバンド内で、一つのホーンセクション的なラインも歌えるようになりたいですし、別にクレイジーな事をしようとは思っていないですが、さらに自分の声の可能性を、様々な音楽のフォーマット上で深く追求しても行きたいです。
と同時に、ここ数年はご無沙汰でしたが(笑)、ジャズヴォーカリストがよく歌うスタンダードの表現をさらに掘り下げつつ、色んなものを取っ払って、もっとピュアに歌っていけたらな、と思っています。
しかし自分ひとりでそう思っていても、共演者がいなければ成り立たない。
音楽性と人間性で信頼出来るミュージシャンと、一緒にゆっくりと独自のサウンドを育んでいければ、サイコーですね。

また、徐々に教育(と言うと固いですが)にも、携わっていきたいと思っています。
折角ニューヨークの大学で学んできた事を無駄にするのは勿体ない!いえ、、その為にはまず自分がもう一度消化していくプロセスがまず必要だと思います。
ここ数年の私のキーワードは『バランス』。
“Performance&Teaching&Learning” このバランスを保てる生活が理想ですね。

拠点は生まれ育った大阪ですが、日本全国そして国外で、ボーダーレスな活動も是非して行きたいですね!

インタビュー記事を最後まで読んで頂きJazz Pageをご覧になっている皆さん、どうも有難うございます★
これかも、さらにクオリティー高い音楽目指しつつ、皆さんと音楽で“何か“を共有していきたいと思っております。
どうぞこれからも応援をよろしくお願いします♪

(2008.10.1)