
Jazz Pageはご覧になったことありますか
いえ。たぶん日本語が読めないから知らなかったのでしょう。
(アントニオ・ファラオの「ネクスト・ストーリーズ」のジャケットを見て)
彼に会ったことがあるよ。私は音楽院で教えているのだけれど私のワークショップに来たことがあるよ。早弾きがうまかったね。
日本にはいつ来ましたか。
先週の土曜日に成田に着きました。その後甲府に行きクラブで演奏しました。クラブで演奏するのは観客と近いので大変好きです。

新譜「Love Dance」リリースされ、また、HQ-CDのコンピレーションもリリースされました。どのアルバムを聞いても大変美しいくメロディクな演奏を行っていますが、どのようにしてそのような美しいフレーズが湧きでるのですか。
私は長い間音楽をやってきました。若い頃はビバップばかりやっていましたね。ビバップは数学的な言語というか延々とだらだら続くような音楽なのでだんだんメロディーを重視する音楽をやりたいと思うようになりました。もう少しストーリー性というか具体的なものを表現したいと思ったのです。即興で作曲をしているようなものですね。
即興で音楽をつくるというのは大変むずかしいことだと思います。ジャズは即興の音楽ですが美しいメロディーをつくれるミュージシャンは数少ないです。どのような努力、練習をしているのでか。
いい質問ですが答えるのが難しいですね。即興の演奏は1秒以内で考えて判断することが重要です。人間の話す言葉は色々ありますが本当にエッセンスというか大事な言葉というのは限られていると思います。音楽でも同じで我々はトリオで演奏していますがヒステリックな演奏ではなく本当にエッセンシャルな言葉を選んで音に載せているのです。
スタンダードは多くのミュージシャンに演奏されています。個性を生かすにはどのようなことを行っていますか。
スタンダードはジャズ・ミージシャン同士の言葉ですね。ジャズの中ではとても重要で必要不可欠なものです。クラシックで言えばバッハやモーツアルトを避けて通れないのと同じですね。多くの優れたミュージシャンがいますがスタンダードをどう演奏するかで評価が分かれてきます。例えば、トゥース・シールマンスが言っていましたが、才能があると思われるミュージシャンと演奏した時に"枯葉"をやったら上手くできないということがあって彼に対する評価が下がってしまったというこがありました。スタンダードはジャズの中では必要不可欠ですね。

初代のヨーロピアン・ジャズ・トリオ(EJT)を離れてハーモニカの名手、トゥース・シールマンスと一緒に活動したと聞きましたがその辺の経緯を聞かせてください。
1989年にトゥース・シールマンスとはじめて演奏しました。まだEJTで活動していた時です。その頃から新しいものを求めていたのでEJTを脱退しました。
トゥース・シールマンスとはあるジャズ・フェスティバルのオーガナイザーから共演をオファーされたのがきっかけです。大御所のトゥース・シールマンスとの共演ということで緊張しましたね。それから6年後、私の町のジャズ・フェスティバルがあって今度は私の方からトゥース・シールマンスに共演の申し入れをしました。その時はドラムスのハンス(ハンス・ヴァン・オーシュタハウトゥ)が既に私と一緒に活動していました。
その後、トゥースが私達を気に入ってくれてギグやドイツのツアーなどお互いに声を掛けるようになりスケジュールが空いていれば一緒にプレイするようになりました。
トゥース・シールマンスとのレコーディングはあるのですか。
ライブ・レコーディングがあります。26回のコンサートの録音がありますが、レコード会社の関係で残念ながら未発売です。
フュージョンの演奏も行っていたと聞いていますが、どのようなメンバーと演奏していたのですか。
トゥーン・ルースというサックス・プレーヤーとはだいぶ前に演奏しました。最近ではウェザー・リポートにいたピーター・アースキンとレコーディングしました。ハンスも一緒です。今年の夏にリリースされますが”Song For Jaco”というベースが美しい曲が入っています。私自身はフュージョンが好きですがレコーディングは少ないですね。
このCD「Story Book / The Princess Project」は昨年発売したものですが、私と歌手のシモーネ・ポーメスが作曲したもので、クラシック、ポップ、ファンク、ジャズといった要素が入っています。男性シンガーのロヴァン・ゴープが加わり、ハイン・ヴァン・ダーガイン(B)、トゥース・シールマンス(Hca)も参加しています。
カレル・ボエリー・トリオのアルバムをつくるにあたり、選曲やサウンドについてプロデューサーのリクエストや意見はどの程度受け入れていますか。
プロデューサーの木全氏とは長い付き合いです。彼と相談しながら選曲しています。
彼から日本人にはこの曲がいいという提案があり私の方でいやこっちの方がいいなどと話し合いながらミックスしていきます。
お互いの意見を半々に取り入れてロマンティック・トリオの路線ですすめています。
オランダでのライブはどのような曲、演奏を行っているのですか。
CDと同じような曲をやっています。ただ、ライブですからダイナミックで速く強い演奏になりますね。
オランダからはキャンディー、ジェッシ・ヴァン・ルーラーなど日本でも人気のミュージシャンが沢山いますが、なぜジャズが盛んなのですか。アメリカの影響はあったのですか。ジャズの教育システムが確立していると聞いていますが。
日本の方がジャズは盛んですよ。1950年代にアメリカのジャズメンが多数ヨーロッパに来ました。バド・パウエルなどもフランスに来て演奏していましキース・ジャレットもだいぶ前ですが来ていました。
教育については、私はハーグのコンサーバトリー音楽院で学んだ経験がありますが、もともと自分の中にはジャズの血があったので教育を受ける必要はありませんでしたが多くの人には必要なのだと思います。
教授陣も充実していますし教え方も進歩しています。
我々3人とも音楽院で教鞭もとっていますが、ハインはロッテルダムのコンサーバトリースクールのジャズ科の学長です。私はジャズは学校ではなく外に出て学びなさいと言っています。目ではなく耳から学びなさいという考えです。
現在のトリオと以前の初代のEJTとのコンセプトの違いはなんですか。
特に違いはないですね。私自身音楽的に発展して来ていまのトリオの音楽になっています。ハンスもハインもコミュニケーション能力はすばらしいので3人の間でのすばらしいインタープレイが出来ています。今のメンバーには満足していますね。
ハインとは25年前に会いました。優秀な人という感じでしたが難しい音楽をやっているという印象でした。その後ハンスは渡米してしまいました。
ハンスとはトゥースとコンサートで一緒に演奏したりクラブでもやりました。ハインがオランダに帰ってきてトリオを結成したという訳です。

ハンスさんからみてカレルはどのようなピアニストですか。(そばでビデオを撮っていたハンスにいきなり質問)
カレルのピアノは音楽の中に深く入るインスパイアリーで魅惑的でそそられる演奏です。トリオの中ではピアノが重要ですが、それぞれがお互いの音を聞きあって一番いいサウンドを醸し出せるのかということを常に考えながら演奏しています。
日本は何回目ですか。日本のジャズ・ミュージシャンの印象は。
EJTで2回、トゥースとは3回、他のメンバーと2回くらいです。
渡辺貞夫や渡辺香津美を知っていますが他はあまり知りません。
日本の聴衆は
すばらしいです。オランダの聴衆よりエモーショナルだと思います。
ブルーノート東京でトゥースと出演した時ですが、美しいバラッドを演奏したら観客で泣いている人がいました。するとトゥースが1枚しかないハンカチを取り出し涙を拭いてあげるということがありました。オランダの聴衆は気が散るようなところがありますが、日本の聴衆は真剣に聞いてくれますね。
今後の抱負ですが、あなた自身どのような音楽を目指していますか。
レコーディングの2ヶ月くらい前にならないと方針が決まりませんが、今後もメロディー重視で行きたいと思います。映画音楽にも挑戦したいと思います。
トゥースも「ミッドナイトカーボーイ」という映画の音楽を手がけました。
映画音楽はインスピレーショナルで壮大なものだと思います。私自身も作曲を続けて行きたいと思います。明日のライブでも新曲をやります。トリオについては今の路線は変わらないと思います。
ファンの皆さんへメッセージを。
日本の皆さんは大好きです。また来日出来てうれしいです。今後30〜40回くらい来たいですね。CDを是非聞いてください。よろしくお願いします。
−シビアな質問にも丁寧に答えて頂き親近感を一層感じました。CD「Story Book / The Princess Project」を頂きました。ありがとう。−
(2009.4.21)
カレル・ボエリー・トリオ・初来日公演ライブ・レポートはこちら >>