3月4日にコロムビアから「Blue In Black」という新譜が発売になります。M-Swift presents 24-Caratという変わったアーティスト名ですが。
最近、ダンスミュージックでは○○presentsというのはありますね。
M-swiftはハウスとかクロスオーバーというジャンルに属する音楽でいままで2枚アルバムを出してきました。スタイルは、ボーカルを中心にソウル、ジャズ、ハウスなどをミックスした音楽でボーカリストがイギリスのミュージシャンと一緒につくっている感じです。ジャズとファンクの中間のミュージシャンと一緒に音楽をつくっています。ジョーイ・ローズ(スティングと共演)とかドナ・ガーディアン(インコグニートと共演)、トニー・モブレム(インコグニートと共演)といった人たちですね。
僕は、2年間ロンドンに行っていたのでその時のコネクションでM-swiftとう名前でアルバムをつくりました。
ロンドンに行く前はジャズ・ギタリストとして活動していたこともありダンス・ミュージックのエリアに行く前につくった曲やその時にやりたかったことを今になってやってみたいという気持ちが再燃しM-Swift presents 24-Caratを今回立ち上げました。
ソウルやダンス・ミュージックサイドをM-Swift 、ジャズ・サイドをM-Swift presents 24-Caratと棲み分けしています。
M-Swift presents 24-Caratはクラブ・ジャズというジャンルになると思いますが。
M-Swift presents 24-Caratには色々な要素が入っています。ファンクやラテンの要素があったりメロディーはハードバップ期のような雰囲気を持ちつつ、ビートはしっかりとしている。そういう意味で、ヒップホップやハウス・ミュージックなどダンス・ミュジックを経験した世代が新たに70年代に試されたクロスオーバーの音楽をもう一度今の時代でやってみたいというのが僕のコンセプトです。
サンタナやデオダードは自分のフィールドの音楽とよその音楽を混ぜ合わせて新しいものをつくってきましたね。僕はそういう手法がすきなんです。
今は80年代、90年代、2000年を経過していますが、70年代になかった新しい音楽が生まれているわけですがそれらを吸収した僕らの世代が70年代の手法で色々な音楽をミックスしていけば面白い音楽が出来るんじゃないかと思うんです。
ヒップホップやハウスにしてもクラブで大きなスピーカーでマシーンの音でドーンターンドーンターンとやるわけです。それに慣れてしまっている今の若者達にとって昔の音楽はダイナミックさがどうしても足りないと思うわけです。
そういうマシーンのキックやスネアの気持ちよさを知っている世代に受け入れられる生の音楽を提供したと思っているんです。
クラブ・ジャズはリズムが強調されていてメロディーやアンサンブルというのが後ろに下がっていますね。リズムが心地よいと感じる人はクラブ・ジャズを楽しめると思いますが、そうでない人はとっつきにくいですね。
クラブ・ジャズはどのように聞けばいいのか教えてください。
クラブ・ジャズはドラムに焦点があたりすぎるのは仕方がないのですがそれは弱点でもあるわけです。ドラムが強調されていれば面白いし楽しいし踊りやすいんですが一方ではアンサンブルがおろそかになっているクラブ・ジャズっていうのが多いと思うんです。
スイング、奔流のジャズ・ファンからするとアンサンブルが甘いとか、ミュージシャン相互のコミュニケーションやインタープレイが面白くないといったところが目に付いちゃうんだと思うんです。僕は以前奔流のジャズをやっていましたのでクラブ・ジャズのそういったところにフラストレーションを持っていたんです。
クラブ・ジャズは、リズムが面白くてアイデアも面白いけど音楽的には成熟したものではないなと感じることが多々ありました。今回のアルバムでは両方を上手く出来ないかと考えて、ホーン・アンサンブルにも気を使ったりピアノの堀秀彰にも力を借りてボイシングもかなり気を使ってもらっていまし、曲の展開やソリストとのインタープレイも楽しんでいただけるようになっています。ですからクラブ・ジャズがはじめての人でもスッと入っていただけると期待しています。
最近のジャズはピアノやボーカルなどメロディックでこじんまりした音楽が好まれ、ジャズ本来が持っているエネルギーやパワーという部分が薄くなっています。
クラブ・ジャズはトランペットとサックスの2管でアコースティックですがパワフルな音楽で今日のジャズに欠けている部分を埋め合わせてくれますね。
エネルギーが出ているということは音楽にとって重要だと思います。
スピリチャリティーというかやっている人間が熱くなっていないとリスナーに伝わらないと思います。テイクを選ぶ時もよく出来ているテイクよりもその人らしさが出ているテイクを選ぶようにしました。今回のアルバムはエネルギーに溢れた内容になったと思います。音楽が持つべきエネルギーは封入出来たと思っています。
イギリスに2年間いらしたそうですが、なぜ日本のクラブ・ジャズはヨーロッパで高い評価を受けるのですか
90年代にアシッドジャズ・ブームがあり、踊れるジャズをジャイルス・ピーターソンやパトリック・フォージが紹介していました。それらは、70年代のレコードの中からジャズっぽくて踊れるものを発掘して人前でかけたら皆が踊ったということです。それは再評価の文化といえます。
その後、新たに僕達がダンス・フロアーということを考えてジャズをつくっていくということをやっているのだと思います。ある意味僕達は第一世代だと思います。
イギリス人からみると僕達がやっていることは面白いと感じているんですね。ロンドンの人は日本のことをかなり尊敬してくれておしゃれな音楽が沢山出ているし面白いジャズもいっぱい出ている、洋服もおしゃれで日本は最先端だと言われます。
ですから、アルバム制作について絶対に海外に出ても遜色ないものをつくったという自負があります。
アシッド・ジャズにダンスの要素を取り込んでクラブ・ジャスが出来たともいえますが、最近、 生演奏によるクラブジャズでは日本がロンドンより先行していますね。
いや、イギリスにも踊れる音楽はあります。移民が多いので本物のサルサやアフロキューバンも聞けるのです。しかし、日本人は無責任というか本物でない部分、よその文化を簡単に取り入れちゃうんですね。でも、それは模倣ではないんです。もろアフロキューバンをやれば模倣になりますがそれはやらないんです。外国の音楽を取り込んで高いレベルで融合させることで新しい音楽が生まれると思うんです。
いま、ヨーロッパのクラブ・ジャズは生の方向から打ち込みという方向に向いてしまっています。ですからなおさら日本から生のクラブ・ジャズがでると注目されるのではないでしょうか。
メンバーを紹介してください。
コアなメンバーはピアノの堀秀彰、ドラムスの岡和博、パーカッションの能智祐輔ですね。他のメンバーもM-swiftで一緒にやっていたりしています。
僕の周りにはコミュニティーのように仲間が出来ているので今回はこの人にやってもらおうという感じで決めています。ロックバンドのようにメンバーが確実に固定されているわけではありません。
今回のアルバムでは堀君の力に負うところが大きいです。堀君は奔流のジャズでやっているミュージシャンですが頭が柔らかいので彼の左腕がダンス・ミュージックとジャズを上手くつないでくれているのです。
ベースのニック・コーヘンも大きな役割を演じてくれました。彼はインコグニート、バーサンバー、マット・ビアンコにも参加していますが、ファンク、レゲエの経験があるので今回のビートの効いた音楽に是非とも参加してほしいと依頼しました。
収録曲にリミックとリプライズ というトラックがありますが。
”SPIRITUAL VIBE (reprise) ””CAFE BAHIA<Marc Mac(4hero) remix> ”
リミックスは素材を別の人に渡してクラブ用に面白くしてほしいというやりかたですね。だだ、ダンス・バージョンをつくってくれというのは芸術の域に入らないと思いますが、この素材を使って何をつくるということになるとゼロから1になる過程がありますから最近のリミックスは新しいアートの形になるのかなと思います。
”CAFE BAHIA”では、過激に変えるのではなくメロディーを残して踊りやすくしました。
リプライズは再構築ということで同じミュージシャンがやっています。
ドラムをミュートして聞いてみたらピアノやソプラノの美しいメロディーがすごく聞こえてきていい雰囲気だったのでイントロにトロンボーン加えて、パーカッションを入れました。ですから、”SPIRITUAL VIBE” ではドラム抜きバージョンということで曲の一部を使って全く違った曲をつくりだしています。
クラブ・ジャズといえばボーカルが入っているのが多いようですが、なぜ、このアルバムでは入れなかったのですか。
M-Swift presents 24-Caratではインストのジャズということをはっきりと言いたかったのです。
クラブ・ジャズが好きな人とハウスが好きな人とは違うのでM-swiftはその中間にあると思います。
M-swiftは打ち込みの音楽でハウスやヒップホップの音色を使ったジャジーな音楽ですが、M-Swift presents 24-Caratは打ち込みを使っていないジャズです。クラブ・ミュージックということではかぶっている部分はあると思います。
ですからヒップホップが好きな若い人だけでなくサンタナやデオ・ダードが好きなミドルの方にも楽しんでいただける音楽だと思います。
ビートが立っているという点では頭の固いジャズ・リスナーからはジャズではないといわれるかもしれませんが“ジャズ”って昔は新しいものを指していましたよね。
ブルースが生まれた黒人達が西洋の音楽に接して作り出した新しい音楽だった歴史があるます。そういう新しいものという精神がジャズだったと思うのです。ですから、奔流でジャズを守り通しているひとは琴を守り通しているのと同じイメージを持ちます。逆に僕はヒップホップの方にジャズを感じたりするのです。新しいものに挑戦しているという意味でジャズをやっていると思っています。
でも、奔流のジャズでも面白いものは一杯出ているということも付け加えたいと思います。
アルバムのどこを聞いてほしいですか
メロディーの美しさとプレーヤー達の温度の高さ。そして色々な音楽の混ざり具合を聞いてほしいですね。
私は作編曲とプロデュースを担当しており演奏には今回は参加していません。当初はギターで参加するつもりでしたが皆が頑張りすぎちゃったので僕が入る余地がなくなりました。
曲は全て私のオリジナルです。
ブラスのアレンジに時間をかけたのでそのあたりも是非聞いてほしいですね。
今後の活動目標や抱負を聞かせてください。
多少変わりますがこのメンバーでライブを行っていきます。3月に麻布のウエアハウス、4月には札幌シティジャズ、そして、7月にはヨーロッパ・ツアーの話も来ています。
今後の方向性についてはこの1年半で3枚CDをリリースしてきたのでこれからのライブの反応を確かめながら次にやりたいことを探していきたいと思っています。
フランスでM Swift presents 24 Caratのレコードが発売になったのですがかなり評判がいいんです。向こうのDJのチャートにも入っているのでこれがどうヨーロッパで評価されるのかもチェックしていこうと思っています。
Jazz Pageの読者にメッセージをお願いします。
フロアジャズですがメロディーはいいと思っているので是非聞いてみてください。
よろしくお願いします。
−サウンドづくりのコンセプトが明確で自信をもっていることがよく判りました。日本のクラブジャズが世界のトップレベルにあることの認識を深めました。丁寧な解説有難うございました。
(2009.2.24)