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安井さち子 「恋人〜エナモラーダ〜」のリリースにあてって
私の音楽を聞いて元気になったと言っていただけるとうれしいです。聞き手の皆様の活力の素になればいいですね。
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Q.恋人(Enamorada)という表題ですが、どのような意味が込められているのですか

これまでの2作がハードなイメージでちょっと男性的な感じがあったので、本作では女性らしさを出したいということもあって「恋人−エナモラーダ−」としました。エナモラーダはスペイン語ですね。
レコーディングは、NYで活躍している最先端のメンバーとの演奏で、私をとても気分よくのせてくれました。ですから、私の心の恋人に捧げたアルバムといえるようなリラックスしたソフトな感じの演奏になったと思います。
Q.レコーディングは順調に行きましたか

はい、非常にスムーズに行きました。
1日リハーサルを行って、本番は2日で済みました。
ベースのデビッド・ウィリアムスはシダー・ウォルトンのトリオでレギュラーのべテランですし、ドラムスのニール・スミスはサイラス・チェスナットのピアノ・トリオのレギュラーでしたから2人ともピアノをどうすれば生かすことができるか壺を心得ているんです。ドラムのニールは勉強家で事前に音源と譜面を送ってくれということで準備OKでしたし、ベースのデビッドはさすがベテランでぶっつけ本番でも問題なくこなしてくれました。セッション的な演奏で緊張感を保ちながらリラックスしたいい演奏ができたと思います。

Q.日本での演奏との違いはありますか

グルーブの深さというのを感じましたね。バラードでも空間だけで音楽が成り立つって言うのでしょうか。うまく言えませんけど、“残像”というか“うねり“を感じるんですよ。
グルーブというと音数がいっぱいにスイングするというのが一般的なイメージですけど、空間で感じさせるというのはすごいことですね。

Q.本作の選曲はどのようにしてやりましたか。いつもライブでやっている曲ばかりですか。

プロデューサーの山下さんと私の2人で決めました。“Ugetsu”はシダー・ウォルトンの曲なのでデビッドもいることだしやってみたらと山下さんに言われました。また、“Left Alone ”と“ The Cat”も今回のレコーディングで初めて演奏した曲です。“ The Cat”はオルガンのジミー・スミスのヒット曲でピアノでの演奏はめずらしいと思います。
私のオリジナルは、“Jack-In-The-Box”、“Moonrise”、 “Twilight Express”“Sweet Thumb Dance”の4曲です。“Well You Needn't”はいつもライブで弾っているようにフリーっぽいイントロで始まっているのですが、ボツになるかと思ったら山下さんがとてもいいから是非入れようということで残りました。

Q.M&Iで3枚目ですが、ピアノ・トリオにこだわるのはなぜですか。

やはり、ピアノ・トリオが一番自分のカラーを出しやすいと思います。もちろん、サックスなど管が入ったりビッグ・バンドなども関心はありますが、今のところはピアノ・トリオというフォーマットでオリジナルを中心に自分のアレンジで演奏していきたいと考えています。

Q.ところで、安井さんがジャズをはじめたきっかけは何ですか。

大学時代では法学部で法律を勉強していました。クラブ活動で軽音楽部に入りマイケル・シェンカーのようなハード・ロックをやっていましたが、その時はキーボードで弾き語りを行うなどボーカルを担当していました。その後、フュージョンのビッグ・バンドに入りピアノを担当しました。楽譜があれば何でも弾けたのですがコードやアドリブには困りました。そこで、もっと勉強しなければと強く思うようになったのです。
大学の最後の年に、レンタルCD屋さんで国府弘子さんのCDを借りて聞いたんです。国府さんのピアノにすっかり魅了されました。当時、女性のジャズ・ピアニストが少ない時代でしたからなおさらです。国府さんの演奏をコピー・プレイしたデモテープを当時国府さんが講師をしていた音楽学校のメーザーハウス宛に送って弟子入りをお願いしました。運よく国府さんの手に渡りデモテープを聞いていただいて大変喜んでいただき、弟子入りOKの返事をいただきました。本当にうれしかったですね。
奈良から東京の国府さんの家に通いましたが、国府さんのレッスンはおしゃべりが半分くらいで気がついたら帰りの新幹線に乗り遅れそうになったりしたこともありました。(笑い)
でも大変刺激になりました。

Q.その後、バークリーへ行かれたのですね。

はい、1996年、バークリー音楽大学の作編曲科に入学しました。奨学金のテストを受けたら受かっちゃったんです。
それまでOLをしながら夜はライブハウスでピアノを弾くという生活でしたので、音楽漬けになれたことはとてもよかったです。
1999年に帰国してしばらく関西で活動していましたが、2002年から東京に拠点を移しています。

Q.安井さんが影響を受けたミュージシャンは誰ですか。

ジョアン・ブラッキーンですね。彼女はバークリーに在籍した時に指導を受けました。身長が180cmくらいある大柄な人です。アート・ブレーキー&ジャズ・メッセンジャーズにも在団したこともある実力派ミュージシャンで激しいタッチで男性的なピアノを弾く人です。
彼女には、音楽はもちろんですが苦労話をずいぶん聞き参考になりました。彼女が活躍していた当時も女性ミュージシャンは少なく、いじめられたこともあったそうですが、それに負けないよう男性的なプレイで頑張ったのだそうです。しかし、女性としての魅力も大事だということを教えられました。爪をきれいにペイントしているのを見せてもらいました。
そのほかでは、シダー・ウォルトン、ケニーバロン、チック・コリア、ビル・エヴンスが好きです。特に、今の私のピアノ・スタイルはビル・エバンスの影響をかなり受けていると思います。
ポップス系では広瀬香美、スティービー・ワンダーやカーペンターズなどを昔聞きましたね。

Q.ジャズについてどのように考えていますか。

ジャズは自己表現が一番できる音楽だと思います。
フリージャズは別として、私の考えるジャズは、鳥かごという枠のなかで自由に飛ぶことができる音楽です。ですから4ビートにはこだわりません。ポップスやロックなどをミックスしたフュージョンではなくストレートなジャズを演奏していきたいと思っています。

Q.今後の抱負を聞かせてください。

これからもコンスタントにCDをリリースして行きたいと思っています。そして、ライブやコンサートを通じ自分の可能性をつき詰めて行きたいです。ですから「恋人〜エナモラーダ〜」も私にとっては通過点ですね。
私の音楽を聞いて元気になったと言っていただけるとうれしいです。聞き手の皆様の活力の素になればいいですね。どこかのメロディ、どこかの部分が聞いてくださった方の琴線に触れてもらえればいいですね。
よくファンの方からメールをいただくのですが、「いい音楽をありがとう」と書いて頂いたりすると本当にうれしいです。
これからも皆様の応援をよろしくお願いします。

ありがとうございました。

安井さんのピアノ・プレイと同じように歯切れのいい明るい応対で話もはずみました。
これからの一層のご活躍を期待します。(2008.1.22)