11月26日、渋谷・オーチャードホールで"Keiko Matsui Japan Tour 2004"を聞いた。
松居慶子は毎年日本での公演を行っており今年は全国10ヶ所で開催、特に、東京ではこの日と翌日にも中野サンプラザで別プログラムでの公演を行うなどますます人気が高まっている。
松居慶子はカルフォルニアに拠点を置き、米国、日本はもちろんヨーロッパ、旧ソ連の国々、中近東、アフリカと、年中、世界中をツアーしている。日本のミュージシャンでこれほど海外の広域に亘って支持されている人を私は知らない。松居慶子の音楽の国際性はいったいどこにあるのだろうか。
70年代以降、ジャズはロップ、ポップス、民俗音楽など他のジャンルとの交流を活発に行うようになり、クロスオーバー、フュージョン・ミュージックと呼ばれるもう1つの流れが出現し幅広い人に好まれるようになった。
私が松居慶子の名前をはじめて聞いたのは10年ほど前、米国勤務から帰った同僚からアメリカで一番有名な日本人ジャズ・ピアニストは松居慶子だと聞いた時だ。当時、松居慶子はアルバム「サファイア」をリリース、全米FMラジオのチャート(R&R/NAC)で第2位を記録し、スムーズ・ジャズのトップ・ミュージシャンへのステップを確実に進めていた。
しかし、メインストリーム系ジャズ専門誌には紹介されたことのない名前で私はキョトンとしたことを覚えている。ハードバップを出発点としてモダンジャズを掘り下げて聞いていた私にとってフュージョン・ミュージック、スムーズ・ジャズは全く興味のない音楽であった。
しかし、この30年の間フュージョン・ミュージックは多様化し、今日、従来のエレクトリック・サウンド一辺倒からアコースティックな要素を取り込む動きが見られ新鮮さを感じさせている。
松居慶子の音楽はキーボードやプログラミングを使用するがアコースティック・ピアノと松居和の尺八が大きなアクセントとなっている。
彼女の音楽は計算され尽くした音楽でその構成のみごとさ、メロディーの美しさはメインストリーム・ジャズにはないものだ。アドリブ・パートもあるがあらかじめつくられたメロディーを使用しているようでボーッと聞いているとテーマとアドリブの区別がつかない。聞こうという意識を持たなくても自然と耳に入って心を癒してくれるのだ。
彼女のコンサートはオリジナルのみで演奏されているが、アメリカ人の曲とはイメージを異にしている。ロックのリズムをベースに日本的、東洋的とも思える印象的なメロディー、そしてご主人の松居和の尺八とマイケル・ギゲンのサックスでサウンドの厚みを増し更にはプログラミングによるオーケストラのような色彩感で日本人はもちろん広く海外の音楽ファンの心を捕らえている。
| Program (ツアーバージョン) |
1st Stage:
Tears of the Ocean (from the album "in a mirror")
Kappa (from the album "live in tokyo")
Minstrel Steps (from the album "tribal beethoven")
Rose in Morocco (from the album #deep blue")
Moonflower (form the album "deep blue"))
Invisible Wing (form new album)
2nd Stage:
Overture for the City (from new album)
Crystal Shadow (from new album)
Bay of Destiny (from new album)
White Castle (from the album "wildfflower")
Across the Sun (from the album "deep blue")
Ancient Wind (from the album "a drop of water"
Walls of the Cave (from the album "under northern lights")
Encore
Facing Up (from the album "Wildflowe"r)
Forever,Forever (from the album "Full Moon and the Shrine") |
MUSICIANS :
Keiko Matsui (piano & keyboards)
Michael Ghegan (saxophone)
Eric Baines (bass)
Art Rodriguez (drums)
Alberto De Almoar (guitar)
Kazu Matsui (shakuhachi) |
公演に先立ち新譜「ウォールズ オブ アケンドラ」を発表した。通常は、レコ発ライブの位置づけでコンサートは新譜からの曲を中心に演奏するのだが、Keikoの場合2ステージでアンコールを含め16曲演奏した内、新譜からはわずか3曲と少なかった。1986年の"Keiko Matsui"としてのデビュー・アルバム”水滴”以来20タイトルをリリースしてきたが、新旧織り交ぜての選曲でKeiko Matsuiの魅力を余すところなく伝えようという意図が感じられた。
彼女の曲は20年前の曲でも決して古さを感じさせない。それは、安易に時流に流されず”愛””平和”をモチーフに自己のサウンドづくりに情熱を傾け続けてきた証左である。
来場のファンもヤングは少なく、シニヤ・ヤング、ヤング・エルダー層が中心の大人の音楽だ。
1stステージは「イン・ア・ミラー」からの"Tears of the Ocean"でスタート。アコースティック・ピアノを使用した静かな曲。休憩をはさんで2ステージの公演で、アンコールが2曲。最後は子供が2歳のときに「ママいつまでも・・・」といわれた言葉をメロディーにしたという"Foreever Foreever"で締めくくった。
満員の聴衆は一音でも聞き逃すまいと真剣に耳を傾けるまるでクラシックのコンサートのようだった。
ジャズのコアなファンはジャズしか聞かない人が多いが、今や、ジャンルにこだわり続ける人は少数派だ。それぞれの音楽の良さを楽しむという視点に立つとより多くの音楽を楽しむことが出来る。
ジャズは創る経過を楽しむ音楽であるがその他の音楽は完成された結果を楽しむ音楽だ。
ジャズが水割りだとすれば松居慶子のような音楽はレモン・スカッシュかコークハイだ。毎晩アルコールはよくない。たまには軽い飲み物も必要だ。
今や、世界のKeiko Matsuiであるが終演後のサイン会では多くの知人、ファンと親しく挨拶を交わしており素顔も音楽同様優しさを表していた。
温かさ美しさを感じさせるすばらしいコンサートであった。 (2004.11.27)
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