優れたアーティストは優れたアーティストを引き付ける。
こんな気持ちを強く感じさせられた”国府弘子ピアノ・アニヴァーサリー「ひろこ倶楽部VOL.5」デビュー15周年スペシャル”を11月7日、赤坂ACTシアターで聞いた。
8月に、演奏活動15周年を記念したアルバム「ピアノ・アニバーサリー」を発表しますます充実さを増しているヒロコが豪華なメンバーですばらしいサウンドを聞かせてくれた。

スタートはアルバム「ピアノ・アニバーサリー」の1曲目”Always”をヒロコ1人のピアノ・ソロで静かにスタート。いつものにぎやかなスタートとは反対ですこしびっくり。
夫君・大坪稔明のProgrammingがストリングスのようなやさしいサウンドでピアノ・ソロを包み込んでいく。
しかし、それも束の間、岩瀬立飛のドラム、八尋洋一のベース、三好功朗のギター、大坪のコンガが加わりパワフルなサウンドへ。
その後、赤木りえのフルートが入り、”Lady Moonlight””Vitamina”を演奏。カラーフルでエキサイティングなサウンドへと発展する。
CDとは異なるアレンジで聴衆を一気にヒロコ・ワールドに引き込んでしまった。

前半は、アルバム「ウェルカム・ホーム/国府弘子〜ベスト&モア」からチョイスされた”Listen To My Hert””Going Gong On””Sky Dancing”そして今年大リーグ入りを宣言した松井秀喜選手へささげた”Go Go Godzilla”などが演奏された。(ヒロコの話によると、松井選手へコンサートの招待状を出したそうだ。松井選手から、忙しくて来れないということでお祝いの花が届けられていた。)
ヒロコのピアノは、美しく親しみやすいメロディーで素直に心に響く。
本当に作曲の才能はすばらしい。
この途中でベースとドラムを須藤満、村石雅行に入れ替えるという贅沢な演出を行った。
ヒロコはこの2組のサイドメンを通常使い分けているが、今日は特別。
岩瀬立飛は最近「宴」というアルバムを発表するなどメインストリーム・ジャズやフュージョン系など引っ張りだこの俊英ドラマー。一方の、村石雅行は芸大出身でユーミンなどのバックも勤めるこれまた超テクニシャン。
こんなに優秀なミュージシャンと何年も一緒にプレイしているのだからいかにヒロコのピアニスト、作編曲家としての力量がミュージシャンからも評価されているか推し量れるというもの。

後半は、この2組のメンバーを同時にステージに入れ、”Lifeline”を演奏。大坪(KB) vs 三好(G)、須藤(B) vs 八尋(B)、村石(Ds) vs 岩瀬(Ds)のバトルを聞かせるという試みを行なった。
最初の大坪(KB) vs 三好(G)では大坪のKBが内容のあるすばらしいソロを聞かせ存在感をアピールしていたが、あとのメンバーのバトルはご愛嬌とはいうもののやたら長すぎて退屈なものだった。
その後、金子飛鳥が登場。一転してピアノとバイオリンのデュオでしっとりと”Nostalgia”を、再びフルートの赤木リエが入り”Star Land”で幻想的で華やかなサウンドになっていった。この曲TV−CMに使われるそうだ。

そして、アンコール。
この日の冒頭、ヒロコは「今日は最後までいないときっと損をしますよ!」と期待をもたせていたが、アンコールで広瀬香味が登場した。彼女の名前は聞いたことがあるが、どんな歌手か私は知らなかった。
アルバム「ピアノ・アニバーサリー」に入っている”Chiffon Cake Bossa”にヒロコが歌詞をつけて広瀬香味がヒロコのピアニカと一緒に歌った。
ボサノバのリズムで情感豊かに歌う広瀬香味に会場はうっとり。
つづいて、”Over The Rainbow”をヒロコのピアノをバックに歌ったが、美しいの艶のある声で広い音域を駆使し微妙なニュアンスと大胆に昂揚する見事な歌い口で聴衆を圧倒した。
こんなに感動的な”Over The Rainbow”を聞いたのははじめて。ポップス・シンガーである広瀬香味のジャンルを問わないすばらしい歌唱力に驚嘆した。
優れたアーティストは優れたアーティストを引き付けるということを強く感じさせられたステージだ。

今回のコンサートでは、いつものピアノ・トリオやCDでのサウンドとは異なりラテン・フュージョンという感じで、ヒロコのサウンド・クリエータ、プロデュ−サーというあたらしい側面をみせてくれた。
ヒロコ自身も感激し、ファンも大満足の心温まるすばらしコンサートであった。
ヒロコの限りない才能はいったいどこまで拡がっていくのだろうか。
これからも非常に楽しみだ。(写真提供:ピュアハート)(2002.11.9)