4月22日、六本木・STB139スイートベイジルで「中村健吾ニューヨーク・クインテット 『ROOTS』発売記念ライブ」 を聞いた。
中村は、1991年、バークリー音大を卒業後ニューヨークヘ移りウイントン・マルサリスのリンカーンセンター・ジャズ・オーケストラに参加したり、ウイントン・マルサリスやウェス・アンダーソンのグループのメンバーとして活動するなど世界の桧舞台で活躍している。
3作目のリーダーアルバム「ルーツ」 の発売を記念して日本ツアーを行い、今夜が最終日となっていた。 CDでは、ピアノのアーロン・パークスとドラムスのロドニー・グリーンが参加していたが、日本ツアーでは名古屋出身の後藤浩二(Pf)、現在、ハーレムに住んでいるという高橋信之介(Ds) が担当、フロントはCDと同じウェス・アンダーソン(As)とマーカス・プリンタップ(Tp)だ。
アメリカで活動している日本人ミュージシャンは数多く、帰国公演もめずらしくないが、この日のようなホーンを加えてのグループはめずらしい。
ニューヨーク直送の本格的なジャズが聞けるとあって会場は満員の盛況。ミュージシャンも多数聞きに来ており、椎名豊(Pf)近藤和彦(As)池田篤(As)木幡光邦(Tp)などJ−ジャズの実力者が詰め掛けていた。

ライブは、2セットでアルバム「ルーツ」からの曲を中心にアンコールを含め11曲演奏した。
PAを余り強調しない演出でホーンが入っている割には全般的に小じんまりしたサウンド。中村のベースもアタッチメントを付けず、マイクで音を拾うやりかたでアコースティックの柔らかさを生かそうとする意図が窺え、最近のベースがブンブン、ピアノがコンコンという音に慣れた耳には最初面食らった。そういえばウイントン・マルサリスが自己のグループで2回目に来日した人見記念講堂でのコンサートの時もそんなPAだったと思い出した。
1stセットは、ピアノ・トリオで1曲演奏した後ウェス・アンダーソンとマーカス・プリンタップを呼び上げ"Fifty Five"を演奏。この曲は、ヤンキースの松井秀喜と55レコードの五野社長に捧げたものだそうだ。中村は、以前、ユニバーサルから五野氏のプロデユースでアルバムをリリースしていたが、五野氏が独立し55レコードを立ち上げたことに伴い、「ルーツ」も55レコードからリリースしたという義理堅い男だ。
アルトサックスとトランペットが入りサウンドが一気に厚みを増した。曲間の中村のアナウンスも流暢な英語を交えて行い、まるでニューヨークのライブハウスで聞いているような気分になってきた。
1stセットは最後はホレス・シルバーの"Sister Sady"。シルバーのアレンジを尊重した演奏でで少し盛り上がってきた。


2ndセットは、変化に富んだステージ。クインテットの演奏に加え、トランペットのマーカス・プリンタップをフューチャーし"Amaging Grace"を演奏。マーカスのトランペットは柔らかい音で低音から高音まで正確なピッチでよくコントロールされている。かなり難しいフレーズを吹いているのだが、ミストーンやフレーズが行き詰ることがなく流麗なソロを行うので少し損をしている。上手いプレーヤーだがもっと感情をむき出しにした演奏もしてほしいと残念に思う。
そこへいくと、アルトのウエスはやはり一枚上手だ。ウイントン・マルサリス・グループのレギラーを長年務めているだけあって大きな体でパワフルなフレーズを次々と繰り出し、連綿としたソロを聞かせてくれる。ノンブレスで長尺のフレーズを織り交ぜるなど聞かせどころも心得ており圧倒的な演奏に会場の熱心なファンをうならせた。
中村が尊敬するチャールス・ミンガスのブルースではこの日のハイライトともいうべきエキサイテキングな演奏となり中村のフロントを煽る強力なバッキングを受け、ウエスとマーカスは躍動感一杯のみごとなソロを展開した 。
彼らのすばらしい演奏を引き出したもう一人の功労者としてドラムの高橋の存在を見落としてはならない。高橋は山下洋輔4Gのメンバーとしてその実力を認められていたが、2002年ニューヨークへ移住し腕を磨いている。フィリー・ジョー・ジョーンズを思わせるスケールの大きなドラミングでホーン・プレーヤーを強力にプッシュしていた。J−ジャズの層の厚さを感じさせるっすばらしい演奏だった。
今回のような、超一流のミュージシャンをサイドメンに従えて自分の音楽を聞かせる中村健吾の姿にヤンキース4番の松井秀樹を見るように頼もしく感じた。J−ジャズはますます面白い。(2005.4.23)