越智順子のライブを7月15日、新橋”サムデイ”で聞いた。
”サムデイ”は最近神楽坂からサラリーマンの街・新橋へ引っ越してきたばかりで、以前とくらべると随分便利になった。
ジャズに情熱を持ち続ける森店主の思い入れがいい音で気軽に入りやすい店づくりにあらわれている。

越智順子は大阪に在住しもっぱら関西地区を中心に活動しているが月に1週間ほど東京のライブハウスに出演している。
越智は4年前"Exposure"でCDデビューしゴスベルフィーリング溢れた説得力のある歌い方で注目していた。
以来彼女は計3枚のアルバムを発表している。

越智のライブを聞くのは初めてであった。CDとライブはどう違うのか楽しみであったが、4年前と大きく変貌しているのにビックリした。
深井克則(Pf)桜井郁夫(B)平井景(Ds)のトリオをバックに2セットで15曲ほど歌ったが豊かなボリュームと的確な音程で実に安定感がある。レパートリーも"Satin Doll"や"As Time Goes Bye"などのスタンダードはもちろん彼女が大好きというマリーナ・ショーやロバータ・フラックの"R&Bやポップスなど幅広い素材をとり上げ見事にスケールアップした越智順子の世界を作り上げている。
歌い方も太い低音部から滑らかで張りのある高音部まで実によくコントロールさており豊かな表現力で聴衆を包み込んでしまう。
そして、なによりも英語の発音がすばらしいことに驚く。アメリカに10年くらい住んでいたかと彼女に聞いてみたらずっと日本だそうで、英会話の勉強はずっと続けているのだそうだ。
2セットを通じ、最もスリリングでジャズホーカルの醍醐味を聞かせてくれたのは"Bye Bye Blackbird"であった。
ベースの名手・桜井郁夫とのデュエットではじまったスキャットはジャズ・ボーカルの大御所カーメン・マクレイがダブッてくるようなすばらしい出来だ。 カーメンは金属的な冷たさのある声だが、越智のそれは温かみを感じる。
インストとの会話で場を盛り上げることの出来る数少ない本格的なジャズボーカリストだ。
CDデビュー当時人気上昇中の同じ関西系のボーカル・綾戸智絵とスタイルが似ておりファンに認知されるのは大変だなと思っていたが今は完全に自己のスタイルを確立している。

休憩時間に彼女と話をすることが出来たが、『ジャズはやればやるほど深いですね』。次のアルバムはいつですかと聞いてみたが、『自分でコンセプトを固めてからにしたい』とのことで随分謙虚な人だなと思うと同時に、ますますこれからも発展が期待できると思った。

ピアノの深井は"SOMEDAY"に越智が出演するときだけ付き合っているそうだが、実に息のあったパフォーマンスを聞かせてくれる。
歌の合間の関西人特有のサービス精神旺盛な漫才のようなおしゃべりで会場を笑わせていた。
ライブならではの変化に富んだ充実した内容で久しぶりに満足したセッションであった。(2003.7.20)