THE JAZZ SINGER/森山良子
私事で恐縮だが昔渋谷の「ハチ公まつり」というのがあってお祭りの仮設舞台で当時新人歌手の森山良子と入れ替わりでバンド演奏をおこなったことがあった。森山が終わると我々学生ジャズバンドの出番で「お疲れ様」と挨拶するとプロの森山良子から「お願いします」と丁寧に返事が返ってきた。うれしかった。 それ以来、私は森山良子のファンである。
その時から36年経った2003年10月に本格的ジャズ・アルバムを森山がリリースした。実に感慨深いものがある。
20年前、カントリー歌手のリンダ・ロンシュタットがジャズ・スタンダードの3枚のすばらしいアルバムを作ったことを思い出させるが、期待に違わぬ素晴らしい出来だ。
森山の声は甘く美しい高音が魅力だが、ジャズを歌うとなるとこれがマイナスにはたらく。プロデュースを担当した島健はキーを下げることを提案し森山もそれを受け入れた。懸命な判断だ。
いままでポップスとして歌ったスタンダードを、このアルバムではジャズとして歌うのに苦労したことと思われる。英語の発音、フェイク、アクセントなどを工夫してジャズ・ボーカルに仕上げている。バックのミュージシャンをJ-ジャズの第一線で活躍している俊英でかため、更にテナーの巨人・マイケル・ブレッカーが参加するなど豪華版だ。
マイルス・デビスの演奏で知られる"Seven Step To Heaven"でバンガード・ジャズ・オーケストラをバックに歌うモダンボーカルは第1級のジャズシンガーの実力を見せてくれる。