第10回東京JAZZ2011が9月2,3,4日、東京国際フォーラムで開催された。
2002年に東京・調布市の東京スタジアム(現、味の素スタジアム)で第1回が開催されて以来、すっかり定着した感じだ。当日は、台風12号の接近で天候が危ぶまれたが、幸い東京は直撃を免れたが時折雨が降る不安定な天気で、インドアでのコンサートの有難味を感じた。
私は、9月3日の昼の部の@カウント・ベイシー・オーケストラ
、A寺井尚子&リシャール・ガリアーノ、Bミシェル・ルグラン・トリオの公演を聴きに行った。
会場に着いたのは開演の13:00を30分ほど遅れて到着、ステージでは、カウント・ベイシー・オーケストラは”Shinny Stockings”を演奏していた。
同楽団は、カウント・ベイシーが1984年に亡くなって以来、OBがリーダーとなりベイシー・サウンドを継承してきた。今回のバンドは、ベイシー存命中の最後のドラマー、アレンジャーとして活躍したデニス・マクレルがコンダクターとなり来日した。マクレルの長身でスリムなボディーで若さを感じさせる指揮ぶりは、結成75周年を迎える老舗ビッグ・バンドが現代に蘇ったような印象を受けた。
私が聴いた4曲は、アレンジも殆どオリジナルのものを使用しており、ソロも当時のイメージを壊さないナツメロ演奏であったが、ベイシー楽団独特のうねりのあるノリで迫力のある演奏を聴かせてくれて、ベイシー・ファンの私は大変楽しく聴いた。大好きな”Whirly-Bird では、超高速でトランペット・セクションがバッチリと合ったソリを聴かせてくれ満足。最後に演奏した”April In Paris”では、例の「One More Time」を演奏したが、カウント・ベイシーの初来日公演では、一旦終わりの部分で拍手はなかったのでベイシーがすぐに「One More Time」と合図してエンディングを繰り返したが、今回は、拍手が入ったので、マクレルがしゃべりを入れ、「One More Time?」 とたずねてからエンディングを繰り返した。
ジャズとしての新しい要素はなかったが、ベイシー・サウンドを懐古できたことに聴衆も喜んでいた。

2番手は、寺井尚子&リシャール・ガリアーノ“ザ・ピアソラ・プロジェクト”with オーケストラ・カメラータ・ドゥカーレ -from イタリア-のステージ。
バイオリンの寺井尚子は、東京JAZZに4回出演している常連。印象的だったのは、第1回でハービー・ハンコックにその技量を認められSUPER UNITに参加、ウェイン・ショーター(Ts)やウォーレス・ルーニー(Tp)など世界のトップ・ミュージシャンと同じステージに立ったことだ。寺井は、その後、日本を代表するジャズ・ミュージシャンになりテレビにも頻繁に出演する人気物になった。共演の、アコーデオン奏者のリシャール・ガリアーノとは、2001年に発表したアルバム「オール・フォー・ユー」で共演して以来幾度となくヨーロッパで共演を重ねてきており、2008年の東京JAZZでも突然の代役を見事に果たしたことは記憶に新しい。
今回は、ストリングスのオーケストラであるオーケストラ・カメラータ・ドゥカーレ -from イタリアが参加した大編成での演奏。オープニングの3楽章からなる”オパールのコンチェルト”でクラシックを想わせる演奏で惹きつける。寺井は、レコーディングする時は<地獄の特訓>という猛練習を行うのだが、恐らく、この日も充分な練習を積んで出演したに違いない。圧倒的なテクニックで寺井の新しい側面を魅せてくれた。
3曲目あたりから、寺井とガリアーノとの掛け合いが目立つようになり、ジャズとは異なるが、即興演奏での妙味が伝わってきた。白眉は、二人の十八番”Libertango”。アイコンタクトを交わしながらお互いの出方を窺い鋭いフレーズを掻き鳴らし新しい音空間を創り出している。緊張感に溢れた演奏にもかかわらず寺井の笑顔のプレイは自信の程をうかがわせ、安心して演奏に浸ることできた。
最後は、お目当てのミシェル・ルグラン・トリオ(ミシェル・ルグラン(Pf)、ピエール・バウサエ(B)、フランソワ・ラゾー(Ds))の登場。3度のアカデミー賞、5度のグラミー賞に輝くフランスの巨星。今回のコンサート数少ない生の演奏を聴いたことがないミュージシャンであり、大いに期待していた。最近、ジャズ・ミュージシャンがルグランの曲を取り上げたCDが多い。「"ウォッチ・ホワット・ハプンズ" チャリート meets ミシェル・ルグラン」、「シェルブールの雨傘
〜ザ・ミュージックオブ・ミシェル・ルグラン / スティーヴ・キューン」、「Umbrellas and Sunshine / Roger Davidson & David Finck」などが注目作だ。今回は、作曲者自らが演奏するので有難味もひとしおというミーハーな気持ちも働いていた。
”Watch What Happens”でスタート。ルバートから入り、やがて4ビートでメロディアスなアドリブを展開。右手のシンプルなフレーズが印象的だ。2曲目の”La valse des Lilas”で早くもボーカルを披露、枯れた味わい深い歌い口で魅了される。メンバーの、ベーシスト、ピエール・バウサエ、ドラマーのフランソワ・ラゾーのフィーチャーも忘れない。”You Must Believe In Spring”では、バウサエがベースでテーマを弾き、音数の多いアドリブを聞かせてくれた。ダイアナ・クラールのツアーにも参加したことがあるという実力を示した。4曲目の”What Are You Doing The Rest Of Your Life”では、アルペジオから4ビートに転換、スインギーなプレイを披露。
マイルス・デイビスが出演した映画「ディンゴ」の挿入曲”Dingo Rock ”では、ラゾーのドラムスをフィーチャー、16ビートでロック調のパワフルなソロを行いステージを盛り上げていた。
ルグランはシャンソンを想わせるおしゃれな演奏が印象的であったが、ジャズ・ミュージシャンとしての実力を明確に示した演奏も見事であった。”The Windmills Of Your Mind”では、アドリブとスキャットを同時に演奏するスリリングなプレイで唸らせた。
アンコールは、お待ちかねの”シェルブールの雨傘(Umbrellas Of Cherbourg )”を演奏、スローで始まり、テンポアップ。4ビートからワルツへ、そして4ビートに戻りジャジーにスイング、ボサノバ、ラグタイム、イタリア風、ロシア風などに変化させ聴衆を沸かせた。ルグランも大喜びでステージを終えた。
ミシェル・ルグランの高い音楽性、エンタテインメント性を感じさせるすばらしいコンサートであった。
来年も、東京JAZZにまだ出演したことのないビッグ・アーティストの出演を期待して止まない。(2011.9.17)
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