6月16日、浜松・アクトシティー・ホールで「ヤマハ・ジャズ・フェスティバル」が開催された。
今年で11回目になるというが私ははじめて聞いた。
6月9日からヤマハ・ジャズ・ウイークとしてのイベントの最終日で大ホールでのコンサートである。
アクトシティ・ホールはBunkamura「オーチャード・ホール」並みの立派な設備でびっくり。さすが、楽器の街”浜松”を象徴するホールだ。

コンサートは児山紀芳氏の監修・司会で行われた。3部構成で1部が「藤井郷子オーケストラ」2部が「マーサファミリー」3部が日野皓正を中心としたリー・モーガン没後30年を記念してのトリビュート・ステージである。

私のお目当ては「藤井郷子オーケストラ」である。
藤井郷子とご主人の田村夏樹は3〜4年まえに”Who's Who”で紹介した。
このとき、田村夏樹から藤井郷子も含めCDを10枚ほど送っていただいた。Jazz Pageでは全部を紹介できず申し訳なく思っているが、CDを全部聞きその緊張感あふれた斬新なサウンドに驚嘆した。
それ以来、是非一度ライブを聞きたいと思っていたがやっと実現した。

生を聞いて予想以上のすばらしいステージであった。
開演するといきなりフリーの演奏がはじまった。ホーン・プレーヤーの数名が客席からステージに登場するという演出で観客の興味を引き付け難解な演奏に対するバリアーを取り払う試みを行っていた。
演奏は、各自のソロパートではフリーで演奏する部分もあったがアンサンブルが随所に織り込まれており綿密なアレンジがすみずみまで行き届いていた。
楽器編成は伝統的なビッグバンドの編成で5SAX(早坂紗知(As)、泉邦宏(As)、片山広明(Ts)、松本健一(Ts)、吉田隆一(Bs),3Tb(はぐれ雲永松、東哲也、福村博),4Tp(田村夏樹、竹内恒夫、福本佳仁、渡辺隆雄)P(藤井郷子),B(永田利樹),Ds(植村昌弘)というものだが、演奏は既成の概念にまったくとらわれない革新的でダイナミックなサウンドであった。
これほどのユニークなサウンドは日本はもとより世界でも存在しない。
聴衆もこの衝撃的なサウンドに完全にノックアウトされた。

演奏された曲は3曲が藤井郷子の作品、2曲が田村夏樹の作品であった。
それぞれが前へ出て譜面を見ながら指揮をとっていたが見事な統率力でメンバーの個性を引き出していた。メンバー個々はいずれも楽器を完全に鳴らす高度な技術をもった人ばかりでトーンの美しさとボリュームの大きさは作編曲者の意図するものを十分表現できるものであった。

海外での評価が高く日本ではいまひとつの藤井郷子であるがこれを機に日本での正当な評価がなされるよう期待してやまない。

第2部の「マーサファミリー」はマーサ三宅、大橋美加、チカ・シンガーの母娘。
"Side By Side""Bei Mir Bist Du Schon " をコーラスで歌った他は3人がソロでいつものスタンダードを歌っただけで特にフェスティバルらしいところはなし。

第3部は”Dedicated To The Memory Of Ledendary Trumpeter Lee Morgan”と題され、日野のバンドに鈴木央紹(Ts)、松島敬之(Tp)、岡崎好朗(Tp)が参加したもの。
ただし、ドラムスは藤山英一郎に変わっていた。

頭の"AnTi Climax"と終わりの"Why Know""Sidewinder"を全員で、"Whisper Not"は3Tpでそして"P.S.I Love You""CANDY""Carolyne"をTpのソロで行った。
3人のトランペットのバトルが聞きものであったが、日野は若手2人を意識しすぎてやたらハイノートだけが目立つソロを行ったのに対し松島、岡崎はいつものペースで自己表現を行っていた。
ハードバップの曲が中心ということもあって岡崎のメロディックでグルーブする演奏が際立っていた。

藤井郷子オーケストラのインパクトが強烈で他のステージがかすんでしまった。
藤井郷子オーケストラがなかったら平凡なジャズコンサートになっていたところだ。
来年はどんな企画なのか注目したい。(2002.6.17)